網膜神経節細胞が死んでいくと、神経線維は減少しその層は薄くなります。
ただし神経線維が減少した所見は個人差が大きく、眼底の観察だけで緑内障を疑うには限界があり、最終的に視野検査を行わないと判定できない症例が数多くあります。
近年、光干渉断層計(OCT)(図3)という眼底の断面を画像化する人体に安全な装置が開発され、神経線維層の厚みを計測することで神経線維層の欠損を調べることが可能になりました。(図4)
当院でもOCTを導入し、これまで判定が困難だった症例でも緑内障の判定が容易になりました。
緑内障によって一旦欠けた視野は、残念ながら治療を行っても回復しないため、治療の目的は進行予防に限られます。
現在、緑内障治療として効果が認められているのは唯一、眼圧(眼球の硬さの指標)を下げることです。
日本人の平均眼圧は15mmHg(水銀柱)ですが、正常値上限の20mmHg以上では緑内障になる危険性は高くなります。しかし20mmHg未満の症例に緑内障が発見されることは実際には非常に多く、たとえ低い眼圧であっても緑内障を引き起こした眼圧であり、放置すれば緑内障が進行すると考え、その眼圧値よりもさらに下げるように治療します。
下げる目標とする眼圧値は個々の症例で異なり、進行の危険性が高いほど低めに設定しますが、視野やOCTを定期的に検査してその都度修正します。
治療として広く普及しているのは、目薬を使って眼圧を下げる方法です。 ただし、作用の異なる目薬を複数使っても目標とする眼圧値まで下がらずに緑内障の進行が早い場合は、レーザー治療や観血的手術も考えなければなりません。
最近のレーザー治療は、合併症が非常に少なく再照射が可能な選択的レーザー線維柱帯形成術(図5)という方法が主に行われています。