(単焦点と多焦点)
「単焦点眼内レンズ」の焦点(ピント)は一点であり、鮮明に見えるという長所があります。
ただし、遠方にピントを合わせた場合は近用メガネが必要になり、逆に近方に合わせた場合は常用メガネが必要になります。
単焦点眼内レンズの費用は健康保険内で対応できます。
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単焦点眼内レンズでは術後もメガネが必要ですが、メガネに頼らずに生活したいとご希望の方に近年、「多焦点眼内レンズ」が続々と登場しています。
若い頃から裸眼で遠くがよく見えていた方は、年齢とともに老眼鏡や遠近両用メガネを必要になることが多いですが、多焦点眼内レンズを挿入すれば、老眼鏡などのメガネの使用頻度を大きく減らすことができます。また近視の方は、常にメガネやコンタクトレンズを必要としますが、多焦点眼内レンズを挿入することで、裸眼で手元だけでなく遠くも見えるようになります。
当院で扱っている多焦点眼内レンズは全て選定療養費の適応になります。
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多焦点眼内レンズは目の中に入ってきた光を複数の箇所に割り振るため、見え方の鮮明さが低下することがあります(コントラスト感度の低下)。
また、複数の箇所に光を割り振る構造により、夜間に強い光を見た時に、光がにじんだりぎらついたり(グレア)、光の周辺部に輪がかかって見える(ハロー)などの夜間光視症の症状が出ますが、多くの方は数ヶ月で慣れてきます。
コントラスト感度の低下、グレア、ハローの程度はレンズの種類によって異なります。
多焦点眼内レンズを挿入した場合、レンズを通して得られる像に脳が順応するまで2週間から1ヶ月ほどかかります。そのため、単焦点眼内レンズに比べて手術後の視力回復は遅い傾向にあります。
多焦点眼内レンズは全くメガネが不要になるというわけではありません。
日常生活のほとんどの場面でメガネなしで生活されている方は約7〜9割と報告されています。
以下の全ての条件に当てはまる方は、適しています。
以下のいずれかの条件に当てはまる方は、不適応になることがあります。(ただし、クラレオンビビティ®では医師の判断により適応となる場合がある)
多焦点眼内レンズには様々な種類があり、ライフスタイルに合わせて最適なレンズを選択します。
ここでは当院で採用している製品の特徴を含めてご説明します。
光学部表面に回折格子が同心円状に刻まれており、光の回折現象を利用して光を2つ以上の焦点(遠中近)に振り分けています。
回折型多焦点眼内レンズは単焦点眼内レンズより術後乱視の影響を受けやすく、軽度乱視でも矯正が必要です。
当院の製品:クラレオンパンオプティクス®、テクニスオデッセイ®(回折2焦点+EDoF=連続焦点型)、ファインビションHP®
・クラレオンパンオプティクス®(Clareon PanOptix)
クラレオンファミリーの特徴である、紫外線・青色光吸収レンズで、独自のエッジ形状が反射光を抑制し、後発白内障の発生も抑えます。大きな特徴として、回折ゾーンを4.5㎜と小さくすることで、瞳孔径(照明環境)の変化に左右されにくく、どんな場所でも安定した見え方が可能で、ハロー・グレアも少ないです。
焦点の光エネルギー配分は遠方、60cm、40cmで、近方と中間距離の差が20cmと抑えられているために、パソコンを主とした事務仕事に向いていますが、30cmまで近づけるとやや見えにくくなるのが欠点です。
・テクニスオデッセイ®
(TECNIS Odyssey)
テクニスのレンズ素材の特徴として、透明性を長期に保ち、サーカディアンリズム同調に必要な青色光を透過しますが、紫外線・紫色光は吸収します。選定療養費対象であるテクニスシナジーの後継レンズであり、2焦点レンズと焦点深度拡張型(EDoF)のメリットを組み合わせた連続焦点型(回折型レンズ)レンズです。
オデッセイは、完全には無くすことのできない術後屈折誤差(残余屈折)による見え方の影響を少なくし、裸眼で見やすくなるように設計されています。また、シナジーに比べるとハロー・グレアが軽減し、コントラスト感度が高くなっている一方で、シナジーより手元が見えにくいのが欠点です。
・ファインビションHP®(FinevisionHP)
欧州で高いシェアを持つ回折型の3焦点レンズで、紫外線・青色光吸収素材です。
焦点の光エネルギー配分は遠方、75cm、35cmで、他の多焦点眼内レンズに比べて手元が見やすいのが長所ですが、パソコンはやや離さないと見えにくいです。
元々が近視で手元の見え方に慣れていた方、手元の作業や細かい文字を読む機会が多い方に向いています。また、瞳孔が拡がる低照度下では光を遠方優位に配分させるため、夜間では遠方は見やすいですが手元はやや見づらくなり、また光学部の回折デザインの形状をスムーズにすることで、ハロー・グレアなどの夜間光視症を軽減させています。
支持部は特徴的なダブルC構造で、水晶体嚢の収縮による力を分散させ、水晶体嚢内での安定性を向上させています。
回折型多焦点眼内レンズの欠点である焦点の谷間を埋めるように新しく開発されたタイプで、焦点深度拡張型(EDoF)と呼ばれるレンズです。
光を2つ以上の焦点に振り分けることなく、見える距離を拡げますので、遠方から中間までの見え方が自然で、より単焦点レンズに近い見え方になります。
見え方に対する乱視の影響も回折型に比べて少ないです。
眼底疾患(黄斑変性症や糖尿病網膜症)や緑内障などの他の病気があると、光を振り分ける構造の回折型眼内レンズでは光のロスが生じ、非適応でしたが、焦点深度拡張型(EDoF)では適応になることもあります。ただし、近くの見え方は満足のいくほど十分ではなく、メガネが必要になることがあります。
当院の製品:クラレオンビビティ ®
・クラレオンビビティ®(ClareonVivity)
クラレオンファミリーの特徴である、紫外線・青色光吸収レンズで、独自のエッジ形状が反射光を抑制し、後発白内障の発生も抑えます。
非屈折型(波面制御型)の焦点深度拡張型(EDOF)レンズで、レンズ中心2.2mmの円環状構造が光を分割せずに視軸に沿って伸張させるため、光のロスがほぼありません。
遠方から中間までの距離に連続的にピントが合い、コントラスト感度が良好なため、動きの激しいスポーツにも適し、レーシック術後も挿入可能です。
ハロー・グレアが単焦点眼内レンズ並に少ないため、夜間の運転も支障ありません。
クラレオンビビティなら、回折型眼内レンズでは非適応となる目の病気がある症例でも、医師の判断で挿入が可能になることがあります。
短所として、50cmより手前がやや見えにくく、近方40cmでは視力が0.6程度のため、手元の細かい作業をする際には老眼鏡が必要になります。
眼科で云う遠中近は世間一般とは異なり、遠方は遠くから1メールぐらいまで、中間は1メートルから50センチぐらいまで、近方はおよそ30~40センチです。
具体的には遠方は遠くから足元まで、中間は料理、パソコン、カーナビ、買い物など、近方はスマホを見る、裁縫、読書、化粧などです。
当院で扱っている多焦点眼内レンズを術後に見やすくなる距離で分類しますと
遠方、80~60センチ、および40~35センチが見やすくなります。
当院の製品:クラレオンパンオプティクス®、テクニスオデッセイ®(回折2焦点+EDoF=連続焦点型)、ファインビションHP®
遠方から約60センチまでを均等に見やすくしています。
当院の製品:クラレオンビビティ®
術後の見え方の質(はっきり見えること)が最も重要とお考えで、メガネの装用に抵抗がないなら、単焦点眼内レンズが最適です。
遠方にピントを合わせた場合でも乱視が無ければ遠くから足元までは鮮明に見えます。
遠くから近くまで全ての距離を裸眼で過ごしたい、夜間に車の運転はあまりしない方には、回折型3焦点眼内レンズあるいは連続焦点型眼内レンズが適しています。スマホ・裁縫なども裸眼で見やすくなります。
ただし色の濃淡や視覚の対象物の輪郭を判別する能力(コントラスト感度)は、焦点深度拡張型(EDoF)眼内レンズよりやや劣ります。
当院の製品:クラレオンパンオプティクス®、テクニスオデッセイ®(回折2焦点+EDoF=連続焦点型)、ファインビションHP®
テニス、ゴルフなどのスポーツを楽しんだり、アクティブに行動したい、長時間のパソコン作業をする、楽器演奏で楽譜を見るには焦点深度拡張型(EDoF)眼内レンズが適しており、40~60歳の男性に多いです。
特に夜間も車の運転をよくする方には焦点深度拡張型(EDoF)眼内レンズが最適です。
ただし、スマホを見たり読書したりするにはメガネが必要になります。
当院の製品:クラレオンビビティ®
モノビジョンとは、利き目を遠方に合わせ、非利き目を中間~近方に合わせる老視矯正方法です。
両眼で見ると、遠くから中間あるいは近くまで見やすくなります。この方法を眼内レンズに応用すれば、裸眼で見やすくなる距離が長くなります。
特に、両眼に焦点深度拡張型(EDoF)眼内レンズを入れて、非利き目を少しだけ近方寄りにするだけで、遠くから近くまで見やすくなります。単焦点眼内レンズでも以下のように適応のある人にはモノビジョンが可能ですが、左右差を大きくする必要があります。
ご年配のなかには、裸眼あるいは単焦点のメガネなのに、遠くも近くも見える方がいらっしゃいます。
この方の目はモノビジョンになっていることが多く、眼内レンズをモノビジョンで合わせても違和感がなく、満足度も高いです。
一方、遠くも近くも利き目を使っている方にモノビジョンを採用すると、左右を上手く使い分けられずに、違和感を強く感じて眼精疲労を訴えます。
また上下斜位があったり斜視角が大きい外斜位でも、両眼視機能が低下したり斜位が顕在化するため、モノビジョンはお勧めしません。
左右差を大きくすると、立体視などの両眼視機能が低下します。
そのため、低照度での精密作業や夜間運転を長時間行う方、神経質な方には向いていません。