当院での近視進行抑制の治療効果を供覧します。
近視度数は角膜屈折力と眼軸長で決まりますが、角膜屈折力は5~6歳で完成するため、近視の進行は眼軸長を測定することで評価できます。
治療効果の判定は30~40%を超える抑制率(治療群の平均近視進行-対照群の平均近視進行/対照群の平均近視進行×100%)で効果ありとします(国際近視研究会(IMI)とFDAより)。
当院で「Axial Manager™」を導入した2022年3月から現在(2025年4月)までに、オルソケラトロジー(OK)、低濃度アトロピン点眼(AT)、およびレッドライト(RL)、あるいはそれらを併用して近視の進行を観察できた症例の一部をご提示します。
既報では近視進行抑制の治療効果はオルソケラトロジー、低濃度アトロピン点眼、ブルーライトのうちブルーライトが最も高いのですが、本邦での開始時期は2023年秋頃と最も新しいため、当院ではオルソケラトロジーあるいは低濃度アトロピン点眼で効果が弱い症例に併用することが多く、ブルーライト単独から開始した症例は2025年4月の現在まで少数です。
青と赤の破線は7歳以上の約9,000人の日本人データを元にした近視眼の進行傾向を示しており、青線は右眼、赤線は左眼です。
また、75%、50%、あるいは25%の表示が右上端にある緑の破線は、無治療における各年齢の眼軸長の分布を表す曲線で、全体を100として、眼軸長が短い順から25番目が25%パーセンタイル曲線、50番目が50%パーセンタイル曲線、75番目が75%パーセンタイル曲線です。
■OKレンズ度数:両)Power-1.00D
【考察】
左端にある眼軸長の起始点が、75%パーセンタイル曲線と50%パーセンタイル曲線の位置から推定して、100%付近にある長眼軸な症例です。
レンズ度数が弱いと近視進行抑制効果も弱くなるという従来の報告に反して、度数-1.00Dと軽度でも治療効果はほぼ100%の抑制率です。
■OKレンズ度数:右)Power-1.50D、左) Power-5.00D
【考察】
75%パーセンタイル曲線より上に位置する長眼軸な症例です。
抑制率0%の右目はレンズ度数-1.50D、抑制率100%の左目はレンズ度数-5.00Dです。オルソレンズ度数が弱いと抑制効果も弱くなるという従来の報告と一致しています。
【考察】
75%パーセンタイル曲線よりかなり上に位置する長眼軸です。
0.01%アトロピン点眼でも抑制率45%ほどの治療効果がありますが、0.025%アトロピン点眼にするとさらに30%ほどアップし抑制率75%になっています。
【考察】
75%パーセンタイル曲線よりかなり上に位置する長眼軸な症例です。
0.025%アトロピン点眼にて片眼のみ55%抑制効果(もう片眼は0%)があります。
【考察】
左端にある眼軸長の起始点が、75%パーセンタイル曲線と50%パーセンタイル曲線の位置から推定して、右眼は100%、左眼は95%付近にある症例です。
0.025%アトロピン点眼にて右眼のみ75%抑制効果(左眼は20%)があります。
症例4と症例5のように、低濃度アトロピン点眼の単独治療では片眼のみ効果が現れる症例をよく見ます。
■OKレンズ度数:両)Power-2.00D
【考察】
75%パーセンタイル曲線よりかなり上に位置する長眼軸な症例です。
近視の進行度が近視進行傾向の曲線を上回るほど強い症例で、オルソケラトロジーのみでは効果がありませんが、0.025%アトロピン点眼を併用することで抑制率70%ほどまで効果が上がりました。
■OKレンズ規格:両)Power-4.00D
【考察】
75%パーセンタイル曲線よりかなり上に位置する長眼軸な症例です。
オルソケラトロジーのみでは抑制率30%ほどの効果ですが、0.025%アトロピン点眼を併用すると眼軸長が短くなるほどの効果があります(抑制効果170%)。
■OKレンズ規格:右) Power-4.50D、 左) Power-5.00D
【考察】
75%パータイル曲線よりかなり上に位置する長眼軸な症例です。
オルソケラトロジーと0.025%アトロピン点眼の併用で100%抑制効果がありますが、0.025%アトロピン点眼のみでは効果が0%になりました。
■OKレンズ度数:右)Power-5.50D、 左) Power-5.50D
【考察】
左端にある眼軸長の起始点が、75%パーセンタイル曲線と50%パーセンタイル曲線の位置から推定して、右眼は100%、左眼は90%に近いところにある症例です。
オルソケラトロジーと0.01%アトロピン点眼の併用で100%抑制効果があります。
■OKレンズ度数:右)Power-4.50D、 左) Power-4.00D
【考察】
75%パーセンタイル曲線よりかなり上に位置する長眼軸な症例です。
オルソケラトロジーと0.01%アトロピン点眼の併用で70%抑制効果があります。
■OKレンズ度数:両)Power-1.50D
【考察】
起始点が75%パーセンタイル曲線と並ぶ眼軸長です。
低濃度アトロピン点眼とオルソケラトロジーを併用しても片眼しか効果がありません。
■OKレンズ度数:両)Power-2.00~4.00D
【考察】
75%パーセンタイル曲線より上に位置する長眼軸な症例です。
オルソケラトロジーと低濃度アトロピン点眼を併用しても効果ありません。
■OKレンズ度数(乱視用):右)Power-5.00D/-2.50D、左) Power-4.00D/-2.50D
【考察】
75%パーセンタイル曲線より上に位置する長眼軸な症例です。
レッドライトにて150%抑制効果あり、オルソケラトロジーを併用しても効果は同じです。
【考察】
起始点が75%パーセンタイル曲線と並ぶ眼軸長です。
7才で-2.00Dの近視がある症例です。
急激な眼軸長の伸展を抑えようと、低濃度アトロピン点眼を行いましたが効果なく、レッドライトにてようやく近視進行傾向の曲線に並ぶ程度の効果を得られました。さらに効果を上げるため、強度近視用オルソケラトロジーの併用を始めました。
【考察】
75%パーセンタイル曲線よりかなり上に位置する長眼軸な症例です。
5歳6ヶ月で調節麻痺下-3.75Dの近視があり、0.025%アトロピン点眼でやや進行したため、レッドライトに変更しましたが、効果は同じでした。
■OKレンズ度数:右)Power-3.00D、左)Power-3.50D
【考察】
75%パータイル曲線よりかなり上に位置する長眼軸な症例です。
オルソケラトロジー単独では効果がほとんど無かったですが、レッドライトとの併用で抑制率70%の効果まで上がりました。