メガネではレンズが角膜から12mmほど離れているため近視が強いと物が小さく見えますが、CLではそのようなことは起こらず、近視の強い方や左右の度数に差のある方にはメガネより優れた矯正手段です。
欠点として、角膜には血管がなく呼吸に必要な酸素は大気から溶け込んだ涙より供給されるため、CLが角膜の形状に合わなかったり、経年変化や手入れ不足などで劣化すると、酸素の通りが悪くなり、角膜を容易に酸素不足に陥らせます。
CLはその取り扱いを誤ると目の健康を著しく損なう危険性を秘めているので、医師による処方と定期検査が必要です。
CLには大きく分けてハードコンタクトレンズ(HCL)、ソフトコンタクトレンズ(SCL)と2種類あります。
HCLは水分を少し含みますが膨らまない直径約9mmの硬いレンズです。
SCLに比べて見え方の質は高く、特に強い乱視の方にお勧めです。
酸素の通りが非常に良いことから目に優しいと言えます。
SCLより劣る点として、初めは異物感を自覚しやすいこと、ぶつかったりすると脱落しやすいこと、SCLに有する使い捨てタイプもHCLには無いこと、長期間の装用で上瞼が下がることがあります(眼瞼下垂)。
ソフトコンタクトレンズ(SCL)は、水分を含んで膨らむ柔らかいレンズで、直径約14mmです。異物感が少ないので初めての方でも慣れやすく、レンズが脱落しにくいのでスポーツをする方にもお勧めです。
乱視を矯正する能力は低く、軽度の乱視には乱視用のSCLで矯正します。以前は対応できなかった強い乱視や不正な乱視に対しても、今はカスタムメイド化した不正乱視対応ソフトコンタクトレンズ(ユーソフト®とケラソフト® )が開発されました。
装用時間の目安は16時間までとし、それ以上装用すると酸素不足による炎症が起こりやすく二次的に感染しやすくなりますので、メガネとの併用が必要です。また、涙液を吸収するためドライアイの方にはその症状が一段と悪化します。
SCLには装用期間で分けて3タイプあり、1日で捨てる「使い捨て」、2週間や1カ月で交換する「頻回交換」、従来型の「1年タイプ」があります。
最も普及しているのは簡便性と経済性でバランスのいい頻回交換タイプで、素材、形状、用途の異なる種類が最も多いですが、最近は1日使い捨てタイプの種類も多くなりました。
従来からのソフトコンタクトレンズは、素材がハイドロゲルしかなく、酸素透過性の低さが欠点でした。
酸素透過性が低いと角膜への酸素供給が低下するため、装用時間が長くなると角膜上皮浮腫を起こしやすく、長期的に装用すると角膜内皮細胞が減少したり、角膜新生血管が生じやすくなります。
ハイドロゲルでは、高分子間の隙間に取り込んだ水を介して酸素透過性を有するため、含水率が高いほど酸素透過性が高くなります。
ハイドロゲルソフトコンタクトレンズで酸素透過性を高めるためには、含水率を上げる、あるいはレンズを薄くする必要があります。
含水率が高くなると軟らかくなるので、装用感は良くなりますが、破損しやすく、水分が蒸発する量が多いために乾燥感を自覚しやすくなります。そのうえレンズの形状保持性は悪くなるので、レンズの装着脱などの取り扱いがしにくくなります。
また他の特徴として、含水率を高めると素材内にタンパク質が侵入しやすくなります。
ソフトコンタクトレンズを装用すると巨大乳頭結膜炎が起こることがありますが、その原因として、コンタクトレンズによる機械的な刺激と、コンタクトレンズに付着したタンパク質汚れによるアレルギー反応が考えられます。
含水率が高いほどコンタクトレンズによる機械的な刺激が少ないので、巨大乳頭結膜炎が生じにくくなりますが、その一方で、コンタクトレンズにタンパク質が付着しやすくなるため、アレルギー反応による巨大乳頭結膜炎が生じやすくなります。
巨大乳頭結膜炎になった場合、一日使い捨てタイプなら機械的な刺激が原因と考え、含水率の高いレンズに変更し、2週間頻回交換タイプならタンパク質汚れによるアレルギー反応が原因と考え、含水率の低いシリコーンハイドロゲルレンズに変更すれば改善されることがあります。
下記の表はソフトコンタクトレンズの各特性に、含水率の高低のどちらが優れているか(赤色)かそうでないか(黒色)かを示しております。
含水率 | |||||
高 | > | 低 | |||
酸素透過性 | ハイドロゲル素材 | 高 | > | 低 | |
---|---|---|---|---|---|
シリコーン素材 | 低 | < | 高 | ||
乾燥感 | 多 | > | 少 | ||
硬さ | 軟 | < | 硬 | ||
ハンドリング(取り扱いやすさ) | 劣 | < | 良 | ||
破損率 | 高 | > | 低 | ||
センタリング(フィッティング) | 劣 | < | 良 | ||
異物感 | 少 | < | 多 | ||
角膜上方に傷(SEALs) | 少 | < | 多 | ||
巨大乳頭結膜炎の発症率 | 低 | < | 高 | ||
たんぱく質の付着 | 多 | > | 少 | ||
巨大乳頭結膜炎の発症率 | 高 | > | 低 |
ハイドロゲルソフトコンタクトレンズの酸素透過性の低さは、ソフトコンタクトレンズの長年にわたる大きな欠点でした。
この欠点を大幅に改善したのがシリコーンハイドロゲルソフトコンタクトレンズです。
シリコーン素材は水よりはるかに高い酸素透過性を有します。
ただしシリコーン素材は硬くて疎水性のため、その素材のみではソフトコンタクトレンズとしては使用できませんでした。
ところが従来からのハイドロゲル素材を混合してシリコーンハイドロゲルとすることで製品化できるようになりました。
他の特徴としてシリコーン素材は親油性のため、脂質汚れが付着しやすくなる傾向があります。
シリコーンハイドロゲルのハイドロゲル素材とシリコーン素材の混合率をハイドロゲル寄りにすれするほど、ハイドロゲルの特徴が顕著になります。
すなわち、硬さは軟らかくなるので、異物感が少なくなって装用感が良くなる一方で、酸素透過性が低くなり、乾燥感は自覚しやすくなり、破れやすくなり、タンパク質汚れの付着は多くなります。
反対に2つの素材の混合率をシリコーン寄りにすればするほど、シリコーンの特徴が顕著になります。すなわち、酸素透過性が高くなり、乾燥感は少なくなり、タンパク質汚れが減る一方で、硬くなることによる異物感、機械的刺激による上方角膜上皮弓状病変(SEALs)が生じやすくなり、女性の化粧品などの脂質成分が付きやすくなります。
下記の表はソフトコンタクトレンズの各特性に、ハイドロゲルあるいはシリコーンハイドロゲルのどちらが優れているかを、優れている方を赤色、劣っている方を黒色で示しています。
ハイドロゲルCL | シリコーン ハイドロゲルCL |
|||
酸素透過性 | 低 | < | 高 | |
---|---|---|---|---|
角膜輪部充血 | 多 | > | 少 | |
慢性の酸素不足による合併症 | 多 | > | 少 | |
乾燥感 | 多 | > | 少 | |
硬さ | 軟 | < | 硬 | |
ハンドリング(取り扱いやすさ) | 劣 | < | 良 | |
破損率 | 高 | > | 低 | |
センタリング(フィッティング) | 劣 | < | 良 | |
異物感 | 少 | < | 多 | |
角膜上方に傷(SEALs) | 少 | < | 多 | |
巨大乳頭結膜炎の発症率 | 低 | < | 高 | |
たんぱく質の付着 | 多 | > | 少 | |
巨大乳頭結膜炎の発症率 | 高 | > | 低 | |
脂質の付着 | 少 | < | 多 | |
女性の化粧品の付き易さ | 少 | < | 多 |
40歳以上になって近くが見えにくくなった老眼への対処法の一つに、遠近両用コンタクトレンズがあります。